洋裁を楽しんでいると、「コットンのミシン糸って無いの?」なんてことを考えることありますよね。とはいえ、街の手芸屋さんなどを訪ねてみても、コットンのミシン糸を見かけることはほとんどありません。ネット通販ですら見つけにくいレアアイテムです(かつては「カタン糸」として親しまれ、一般的に流通していたようですが…)。そんなコットンのミシン糸を使って感じたメリット・デメリットについて紹介しています。「カタン糸を使ってみたいけど」という方はぜひ参考にしてみてください。
カタン糸(コットン100%のミシン糸)とは
カタン糸とはコットンで作られた糸のこと。コットンがなまってカタンになったといわれています。「コットンの生地に合わせてコットンの糸を使いたい」なんてことを思うと、気になる糸のひとつです。
ナイロンなど一般的な糸同様に、ミシン用の糸と手縫い用の糸が存在しています。本記事はミシン用のカタン糸についての紹介です。
コットン100%のミシン糸(カタン糸)のデメリット
メリット・デメリットのあるカタン糸ですが、まずはデメリットから解説していきます。
入手性がすこぶる悪い
ミシン用カタン糸最大のデメリットといえるのが「入手性の悪さ」。白・黒はまだ見つかるのですが、その他の色は絶望的です。一般的な手芸店で見かけることはほとんどありませんし、ネット通販でも見つけるのが困難。現代社会において、「そんなことある…!?」というほどのレアアイテムです(手縫い用のカタン糸であれば、ダイソーなどでも購入できます)。
また、カタン糸がマニア向けの製品であるため、職業用や工業用ミシンを前提とした太巻きのモノばかり。一般的なミシン糸サイズはほとんど見かけません。試しに使ってみたいという方にとって、1000m近い糸を購入するのは、高いハードルです。
この入手性の悪さですが、裏を返せば、コットンのミシン糸が絶滅寸前ということでしょう。この状況が今後改善されることは基本的にないと思うので、私はある程度の量をキープ。気になった方は購入できるうちに購入しておくことをおすすめします。
上記写真は左がデニムの補修に用いているグレーの50番手(東洋)。そのほかはデニム飾りステッチ用に利用している20番手の糸です。
以下はアマゾンで見かけたモノ。私が使っている糸とは異なりますが、レビューなどを見るかぎり、よさそうです。
家庭用ミシンで飾りステッチに使いたい場合、以下でしょうか。30番手でそれなりに太さがありそうです。
なお、糸のコスパを考えると、太巻きの糸はおすすめ。以下のようなアイテムを利用すれば、家庭用ミシンでも太巻きの糸が使用可能です。
糸調子を合わせるのがややシビア
カタン糸は糸調子を合わせるのがややシビア。糸調子を合わせるのが苦手な方にとっては、やっかいかもしれません。
「カタン糸」と検索すると「ミシン壊れる」といったワードがサジェストされることがありますが、この糸調子のシビアさが原因なのかもなんてことを思ったり。とはいえ、コットンの糸がNGということはないはずです。
例えば、ジャノメの自動糸調子付きの家庭用ミシン「JC570DX」のマニュアルを見てみると、適した糸として、「綿糸」と明記されています(もちろんポリエステル・ナイロン糸も明記されている)。ミシンが壊れるのであれば、綿の糸は使用不可と記載されるはずです。
「我が家のミシンで使えるの?ミシン壊れる?」と疑問に思った方は、まずはマニュアルをチェックすることをおすすめします。
なお、糸調子を合わせるのはシビアとはいえ、不可能ではありません。ざっくり言えば慣れの問題です。以下は糸調子があっている状態。
裏はこんな感じです。
糸の太さは50番手。ミシン針は11番を使いました。
コットン100%のミシン糸(カタン糸)の魅力
続いては、コットン100%のミシン糸にしか出せないメリットについて紹介していきます。
雰囲気がよい
カタン糸を使うメリットのひとつが雰囲気のよさ。コットンなどの生地になじみやすく、デニムを縫いたい方にとってはこれ以上ない糸と言って過言ではないはずです。実際、こだわりのデニムブランドの縫い糸にはカタン糸が使われていることも多々あります。
以下、コットン100%の糸と、ナイロン糸でデニムにステッチを入れてみたモノ。上4本(ベージュ・マスタード)の太い方がカタン糸です。
コットンらしい毛羽たちが見えるでしょうか。雰囲気の違いは写真だと伝わりにくいですね…。現物はけっこう違います。なお、カタン糸の太さは20番手、縫い針は16番手を使いました(ナイロン糸は30番手です)。
独特の雰囲気を求めるのであれば、カタン糸を使うのが一番です。
色の変化を楽しめる
色の変化を楽しめることも、カタン糸の魅力。
シャッペスパンなど、ポリエステルの糸は色落ちしないため、デニムなど色落ちを楽しむ衣類に使うと、色落ちした生地とクッキリ色が残った糸との間に違和感が生まれがちです。
一方で、カタン糸であれば、生地と一緒に退色していくため、着ているうちに、自然なこなれ感が生まれます。デニムのお直しにもカタン糸はおすすめ。以下はデニムシャツの裾をお直しした様子です。
ポリエステルの糸だと補修した糸の色がいつまでも残ってしまいますが、カタン糸で補修しておけばデニムの色落ちと共に、カタン糸も色あせていきます。つまり、補修あとが自然と生地になじんでいくということです。
デニムシャツを補修している模様については、下記ブログをご覧ください。
退色しやすいということだけをとらえると完全なデメリットなのですが(おそらく色落ちするということもカタン糸が廃れた原因のひとつだと思います)、うまく使えば大きなメリットといえる部分です。
肌ざわりがよい
化学繊維ではないため、肌ざわりがよいことも魅力。赤ちゃん用の衣類などを作成したい方にとってもかなり魅力的な糸といえます。
あるいは、肌着を自作したいといった方にもおすすめです。
針目がとばない
カタン糸は伸縮性が少ないため、糸目がとばないというメリットがある…らしいです。確かに、使っていて糸目が飛んだ記憶はありません。飾りステッチとして利用したい方にとっては大きなメリットです。
コットン100%のミシン糸(カタン糸)は魅力的!
以上、愛用しているカタン糸についてのレビューでした。入手性の悪さや糸調子の合わせにくさといった問題はあるのですが、カタン糸にしか出せない雰囲気があるのもまた事実。気になった方はぜひトライしてみてください。カタン糸が気になっている方であれば、必ず気に入るはずです。