カジュアルウエアの王道といえばやはりジーンズ。洋裁好きであれば一度は「ジーンズを自作したい」と考えたこともあるのではないでしょうか。一方、ジーンズを本気で自作しようと思うと、まあまあ大変。ドーナツボタンにリベットにとさまざまな難関が立ちふさがります。
もちろん然るべき道具を使い、然るべき時間をかければ自分でも可能です(リベットやドーナツボタンも個人で手にはいります)。けれど、そこまでの手間と時間をかけるならばそこそこ良いジーンズを買った方が安くつくはず。
とはいえ、「自分好みの生地で、自分好みのシルエットでデニムパンツを作りたい!」という思いも捨て難い…。
折衷案ということで、縫うのが簡単なイージーパンツ(ジーンズ風)を作成しました。簡易的なパンツとはいえ、赤耳などできる範囲で自分の好みを詰め込んだため、想像以上に良い感じの仕上がりに大満足です。ジーンズを自作してみたいけど、それほど手間はかけられない…という方はぜひ参考にしてみてください。
作成したデニムイージーパンツ
それではさっそく作成したデニムイージーパンツをご紹介します。足元をみると赤耳つきのジーンズ。腰回りはイージーパンツという仕様です。
ウエスト部分は以下のような感じ。全体にゴムを入れつつ、微調整用のドローコードもつけました。生成りの紐がよいアクセントになっています。
フロントのポケットは手をいれやすいよう斜めに。けっこう便利です。バックポケットは一般的なスエットにのっとり右側だけつけました。この辺をどう作るかは好みでしょう。
裾部分をアップにしたのが以下。
赤耳を重宝がってしまうのは昭和生まれの性でしょうね。
ジーンズといえばリベットも欲しいという方は下記ブログも参考にしてみてください。貫通リベットの打ち方を解説しています。
デニムイージーパンツの作り方
それではさっそくデニムイージーパンツの作り方について解説していきたいと思います。
材料
まずは使った材料をご紹介。
- 赤耳付きのデニムが2mほど(ギリギリだったのでもう少し余裕があった方がよさそう)
- 35mm幅のコットン綾テープが1mほど
- 生成りの紐が1mほど
- 幅15mmのゴムが1mほど
その他、ミシンやハサミなどが必要です。
昔は赤耳付きのデニム生地を趣味で購入するのは困難だったのですが、今では簡単に手に入ります。便利な世の中になりました。
デニムを水通しする
購入したデニム生地は水通しと地直しをしておきましょう。
よけいなノリを落とし、あらかじめ生地を縮め、縦横をそろえておく作業です。詳しくは以下でご紹介しています。
ちょうどよいサイズのパンツからざっくりと型を取る
自分用の洋服を作成する場合、型紙は適当で大丈夫と個人的には思っています。作っている途中で調整はいくらでもできるので。
ということで、シルエットなど気に入っているパンツを新聞紙に当てて、ざっくり型をとりましょう。
完璧な型紙ではありませんが、十分にその役割を果たしてくれます。切り出すと以下のような感じです。
注意点としては、ボタンやチャックなどのないイージーパンツなので、ウエストに十分余裕があるパンツを型紙のベースとすること。ピッタリしたパンツをベースにすると構造上履けなくなってしまいます。
仮縫いしてシルエットを確認する
ざっくりとした型紙を作成したら、それをベースに生地をカット。この時点では調整することを前提として大きめにカットしておくことをおすすめします。
それに続いて、ざっくりと仮縫いしてシルエットを確認してみてください。下記ステッチが何本か見えるのは適当に縫ってみた箇所です。
せっかく自作するのですから、好みのシルエットにしたいもの。「もうちょい細くしてみよう」や「テーパードをきかせてみよう」など、いろいろ試してみることをおすすめします。
以下、仮縫いして試着してみたところ。
仮縫いの段階では太めのパンツを作成予定だったのですが、どうしても似合わないので、最終的にはちょっと太めのパンツに落ち着きました。
なお、ミシンで仮縫いする方法は以下ブログにてご紹介。手縫いよりもかなり効率的なので、アイデアをいろいろと試せます。ぜひ参考にしてみてください。
型紙を作り直す
仮縫いして、めざすべきシルエットが決まったら縫い目をいったんほどいて、型紙を作り直しておきましょう。大きめの紙(私は新聞紙を使用していますが、本来的にはもっとしっかりとした紙の方がベターです)をあて、仮縫いのステッチをベースに、型に落とし込んでいきます。
型紙さえあれば、複製も簡単です。
余計な部分をカットし本縫いの準備
続いては新しい型紙を当てて、余計な部分をカット。右足・左足と布を重ねて、型紙も重ねて、ロータリーカッターで一気にカットしました。これで左右の布がほぼ同じ大きさになります。
ロータリーカッターは裁断におすすめのアイテム。裁ちばさみでもカットできますが、正確さと楽さ(お値段の安さも)という意味ではロータリーカッターの圧勝です。今後も洋裁を楽しみたい方であれば、持っておいて損はありません。
ここまでくれば作業の8割くらいは終了。あとはちょちょいと縫うのみです。
縫い合わせる
いよいよ洋裁らしい「縫い合わせる作業」。洋裁に慣れていない人ですと大変そうに思うかもしれませんが、ミシンがあればけっこう簡単。特にパンツは難しい箇所はほとんどありません。
①足の内側
まずは足の内側部分を縫い合わせます。右前足と右後ろ足の生地の表面を合わせて縫えばOKです。
ポイントは上記矢印のように股側から足先へと向かって縫うこと。パターンが適当なので、前後で長さが違う可能性がありますが、股側から縫えば足先の生地がちょっとズレるだけで致命的な結果にはなりません。
うちのミシンではジグザグ縫いができない(ロックミシンもない)ので、ホツレ防止に折り伏せ縫いで処理しました。折り伏せ縫いのサンプルは以下。布の端が縫い目の下に隠れるため、ホツレ防止になります。
表側から見てみるとこんな感じ。
ステッチが見た目のアクセントになるのと、補強になるメリットもあります。デメリットはミシンに慣れていないとちょっと難しいことです。
折り伏せ縫いで処理するか、ジグザグ縫いで処理するかは、手持ちの道具の機能とどこまでこだわりたいかによって決まります。個人的には、特にミシンに慣れていない方であればジグザグ縫いで十分だと思います。
以下、折り伏せ縫いのやり方解説です。ジーンズの足内側は縫い代を前に折って処理するのが一般的なので、それに従います。
まずは前側の縫い代を半分くらいカット。
縫い代をアイロンで前側に倒します。
続いては後ろ側の縫い代を手で折りたたみながらミシンをかけましょう。
以上で伏せ折り縫いの完成です。ポイントは折り目の太さなどにこだわり過ぎないこと。誰も細かなポイントなんで見ないので、おおらかな気持ちで縫い進みましょう。慣れればそんなに難しくもありません。
②股を合わせる
左右の足の内側を縫ったら、続いては股部分を縫っていきます。左右の生地を中表で合わせ、ミシンをかければOKです。
ポイントは股の中心部分から両側に向かって縫うこと。端から縫うと股間がズレたりすることがありますが、中心から縫えば大きくずれることはありません。ズレてほしくない部分から縫い始めるのがおすすめです。
家庭用ミシンですと、生地が重なっている部分でモーターが空回りするかもしれません。その時にはミシンのはずみ車を手で回せば縫えます。
股間部分も折り伏せ縫いで生地の端を処理しました。まずは左足側の縫い代を半分くらいにカット。
アイロンで縫い代を折り曲げたのち、長い方の縫い代を折り曲げながら縫っていきます。
ジグザグ縫いができるのであれば、ジグザグ縫いで端のほつれを防止して縫い代をアイロンで開けば問題ないとおもいます。折り伏せ縫いをしたい方は先ほど紹介した方法と同じように縫えばOKです。
股を縫い合わせると以下のような状態になります。
ゴールはもう少しです。
③足の外側(赤耳部分)
続いては赤耳部分を縫っていきます。「ジーンズを作ってる!」感の出る作業です。赤耳どうしを合わせて、端から1cmくらいの場所を縫ってきます。ガイドとなる溝がミシンに彫られていると思うので、それを参考にするのもよいですし、感覚を頼りにするのでもOKです。
赤耳をアイロンで開きました。マチ針なども使っていないのでちょっと曲がったりしていますが、誰も気にしないでしょうし、問題ありません。
④ウエスト部分
赤耳部分を縫うとてきめんズボンらしくなるもの。いよいよ作業も終盤です。ここでウエストを完成させてしまいます。一般的なジーンズですとウエスト作成はかなり大変なのですが、ゴムウエストのイージーパンツなら超がつくほど簡単です。
まずはコットンの綾テープ(幅3.5mm)の端を1cmくらい折り曲げて縫っておきます。
それをウエスト部分にぐるりと1周縫い付けます。
ある程度縫ったらミシンをいったん外します。
そして綾テープの反対側の端を折り曲げて処理しましょう。
これで綾テープのサイズがピッタリになります。
最初から長さを計ってピッタリにしておけばよいのでしょうが、どうしてもズレるので、私はこのやり方が気に入っています。残りの部分も縫い付けておきましょう。
綾テープを縫い付けた後に、ハトメを装着しました。以下はハトメを並べてどれにするか検討しているところ。
ハトメは色や大きさがさまざまなので、しっくりくるのを考えます。この悩む作業が楽しいんですよね。
結局、シルバーの500番を装着しました。
ハトメの取り付け方は以下です。
まずはハサミで小さな穴をあけ、
パーツを取り付けます。
打ち具にセットし、ハンマーで叩きましょう。
以上で取り付け完了。道具さえあれば簡単です。活用方法はいろいろとあるので、DIYや洋裁が好きであれば持っていて損はありません。
ハトメは手芸店で簡易的なモノを購入できますが、デニムやレザーなど厚手のモノには向きません。無茶な値段ではないので、ちょっと本気なモノを手に入れることをおすすめします。
続いてはテープを折り返して反対側の端を縫えば、ウエストのゴムを通す部分の完成です。
生成りの紐を通します。紐を通す道具が見当たらなかったので、とりあえず手元にあった毛抜きで代用。
無事に紐が通りました。
ゴムも同じように通します。ゴムを入れるかはお好みで。まあ、入れてた方が確実に楽ですけど、「ゴムウエストのパンツなんて…」という意見もまあわからなくはありません。
⑤裾
ウエストが出来上がれば裾を処理します。まずはちょうど良い長さにカット。
あとは折り曲げて縫うだけです。
ここまで縫ってきた方であれば簡単に処理できるはずです。
裾はチェーンステッチじゃないとイヤだ!という方は、普段ジーンズを買っているお店などに相談してみてください。持ち込みの裾上げをしてくれるショップはけっこうあります。料金は1,000円程度のはずです。
⑥ポケットを付ける
最後にバックポケットを縫い付けます。以下はポケットの型紙を作っているところ。
見ての通りざっくりですが、これで十分です。
生地をカットして、
ちょうど良さそうな位置に縫い付けましょう。
ポケットはあっても無くてもなので好みで。このタイミングであれば、縫い付ける場所で悩むこともありません(ちょっと縫いにくいですが)。
以上でデニムイージーパンツの完成です。なお、作業が大変になるため、サイドのポケットのつけ方は省略しています。洋裁に慣れていない方はとりあえずなしで作ってみてください。
ジーンズの自作は大変だけど…
以上、デニムのイージーパンツの自作方法でした。
ジーンズを縫うのは大変ですが、イージーパンツであれば家庭用のミシンでもなんとかなります。また、リベットやボタンなどが必要ないため、作業的にも、費用的にも負担が少なくて済むことも大きなメリットです。
いつかはジーンズを作りたいという方も、とりあえずイージーパンツを作ってみてはいかがでしょう。きっと楽しめるはずです。
【追記】
作成したジーンズにセンタープレスを入れてアレンジしてみました。その模様を下記で紹介しています。気になった方はチェックしてみてください。